新涼や 朱の一つ印 乾くまで ―詠子―

こんにちは、詠子です🌸

朝晩の風に、少しだけ秋の気配が混じるようになりました。九月は、夏の名残と秋のはじまりが重なる、ふしぎな月です。

そして今年の九月には、少し特別なことがあります。

九月二十五日の「中秋の名月」は、満月ではありません。

本当に月が満ちるのは、その二日後、九月二十七日の午前一時四十九分。国立天文台によれば、名月と満月の日付がずれること自体はよくあるものの、今年のように二日もずれるのは少々珍しいことなのだそうです。

つまり今年の十五夜は、まだ満ちきらない月を愛でる夜ということになります。

満ちるのを待たずに、いまのままの月を美しいと思う。なんだか御朱印集めにも似ているなと、詠子は思いました。全部そろわなくても、その日いただいた一枚が、その日いちばん美しいのですから。

このページでは、二〇二六年九月の御朱印めぐりに役立つ情報をまとめています。各寺社の九月の授与内容はこれから発表される時期のため、新しい情報が入りしだい随時更新していきます。


■ 九月の暦|御朱印の意匠になる日

九月は、御朱印の意匠になる節目が多い月です。まずは日付から押さえておきましょう。

日付 行事 御朱印によく描かれるもの
9月8日ごろ 白露(はくろ) 露、すすき、秋の七草
9月9日 重陽の節句(菊の節句) 菊、被せ綿、菊酒
9月上旬 秋の例大祭シーズン 神輿、社紋
9月20日〜26日 秋のお彼岸 彼岸花、萩
9月23日 秋分の日
9月25日 中秋の名月(十五夜) 月、うさぎ、すすき、団子
9月27日 満月(1時49分)
(10月23日) 十三夜 栗、豆 ※「後の月」

■ 九月九日・重陽の節句|菊に長寿を願う日

九月の御朱印で、まず菊が増えるのはこの日のためです。

重陽の節句は、五節句のひとつ。三月三日の桃の節句、五月五日の端午の節句と同じ並びにありながら、いまではいちばん知られていない節句かもしれません。

なぜ「重陽」というのか。

古来、奇数は陽の数とされてきました。そのなかで最も大きい九が重なる日だから「重陽」。めでたさが極まる日であると同時に、極まったものは転じやすいとも考えられ、邪気を祓い長寿を願う日とされてきました。

「被せ綿(きせわた)」という風習をご存じでしょうか。

節句の前夜、菊の花に真綿をかぶせておきます。ひと晩かけて綿は菊の香と夜露を吸い、翌朝、その綿で体を拭う。そうすると老いを遠ざけられるのだと言われました。

平安の女性たちが実際に行っていた風習で、『紫式部日記』にもこの綿を贈られた場面が出てきます。

御朱印に描かれる菊の上に、白いふわりとしたものが添えられていることがあります。あれが被せ綿です。意味を知ってから見ると、ただの飾りではなくなります。 千年前の誰かが、朝露に濡れた綿で頬を拭っていた――その風景ごと、一枚の紙に写し取られているのですから。

菊酒、菊枕、菊の被綿。九月上旬の御朱印を集めるときは、菊がどう描かれているかに目を留めてみてください。


■ 九月二十五日・中秋の名月|そして十月二十三日の十三夜

中秋の名月は、旧暦八月十五日の月のことです。今年は九月二十五日にあたります。

すすきを飾り、団子を供えて月を待つ。日本人にいちばん親しまれてきたお月見です。すすきは稲穂に見立てたもので、収穫への感謝がこめられています。まだ稲刈りの前だから、稲の代わりにすすきを立てる。そういう心づかいの行事です。

そして、忘れてはいけないのが十三夜です。

十三夜は旧暦九月十三日の月で、今年は十月二十三日。中秋の名月を「前の月」、十三夜を「後(のち)の月」と呼び、両方をあわせて「二夜(ふたよ)の月」と言います。

昔は、片方だけ見るのを「片見月(かたみづき)」と呼んで避ける風習がありました。十五夜を見たなら十三夜も見る。縁起の上でも、そのほうがよいとされたのです。

十三夜には栗や豆を供えることから「栗名月」「豆名月」とも呼ばれます。御朱印の意匠も、十五夜のうさぎとすすきから、十三夜では栗や実りへと移っていきます。

九月の月の御朱印をいただいたら、十月の分も心に留めておく。 そんな集め方も、この季節ならではだと思います。


■ 秋の例大祭にあわせた御朱印

九月上旬は、各地の神社で例大祭が行われる時期です。祭礼の日にだけ授与される特別な御朱印は、その一日を逃すといただけません。

東京都・阿佐ヶ谷神明宮では、例年九月上旬に例大祭が催され、町神輿の連合渡御が行われます。刺繍入り御朱印「大和がさね」で知られる神社で、過去には例大祭にあわせて菊の御紋を刺繍した特別な一枚が授与されたこともありました。

今年の九月分の授与内容は、まだ発表されていません。 公式サイトや公式Xで告知されますので、お出かけ前にご確認ください。

阿佐ヶ谷神明宮 公式サイト


■ 京都・秋の三つの行事

九月の京都には、暦と深く結びついた行事が続きます。いずれも御朱印の授与については公式に発表されていませんが、行事そのものは開催が決まっています。 参拝の計画を立てるときの参考にしてください。

上賀茂神社「重陽神事」|九月九日

重陽の節句当日、午前十時から執り行われます。菊酒の接待があり、あわせて「烏相撲(からすずもう)」が奉納されます。

烏相撲は、神職が烏の鳴き声を真似ながら独特の所作を見せ、そのあと氏子の子どもたちが土俵で相撲を取るという珍しい神事です。上賀茂神社の御祭神ゆかりの八咫烏(やたがらす)の伝承にちなむものと伝えられています。

菊を愛でる雅やかな節句に、子どもたちの相撲。この取り合わせが、なんとも上賀茂らしいと詠子は思います。

上賀茂神社 公式サイト

晴明神社「晴明祭」|九月二十二日・二十三日

陰陽師・安倍晴明公をお祀りする晴明神社で、一年でもっとも重要な祭儀です。秋分の日に行われるため、今年は九月二十三日にあたります。

  • 九月二十二日(火)夜 — 宵宮祭。湯立神楽の奉納と、子どもたちのお迎え提灯行列
  • 九月二十三日(水・秋分の日)午前 — 例祭
  • 同日 午後 — 神幸祭。少年鼓笛隊を先頭に、鉾、八乙女、神輿など総勢約五百人の行列が西陣の氏子地区を練り歩きます

湯立神楽は、大釜で沸かした湯に笹を浸し、勢いよく振って湯を飛ばす神事です。その湯を浴びると無病息災のご利益があると言われています。

なお、九月二十六日は安倍晴明公の命日にあたり、嵯峨の墓所で墓所祭が行われます。

晴明神社 公式サイト

大覚寺「観月の夕べ」|九月二十五日〜二十七日

中秋の名月そのものの日から始まります。

旧嵯峨御所・大覚寺の大沢池は、日本三大名月観賞地のひとつ。平安のむかし、嵯峨天皇が舟を浮かべて月を愛でた場所です。水面に映る月を舟の上から眺めるという、千二百年前と同じ楽しみ方ができる数少ない場所でもあります。

公式サイトに、今年の詳細が出ています。

項目 内容
日程 令和8年9月25日(金・中秋)〜9月27日(日)
時間 17時30分〜21時(20時30分受付終了)※昼夜入替制
参拝料 大人700円・小中高生300円

ここで大切なお知らせがあります。

龍頭鷁首舟(りゅうとうげきすしゅう)で大沢池を遊覧し、五大堂の観月席でお抹茶をいただける「特別チケット(7,000円)」は、事前申込の受付がすでに終了しています。

ただし、各日十七時三十分より、特別チケット引換所でキャンセル待ちの受付があります。当日キャンセルが出た場合のみ、番号順に購入できるという案内です(キャンセルが出ない場合もあります)。

事前申込がなくても、大沢池エリアへの入場・散策・お月見はできます(参拝料 大人700円・小人300円)。舟に乗れなくても、池のほとりから見る月は十分に美しいはずです。

日中に参拝された方も、夜間は別途参拝料が必要になりますのでご注意ください。また、飲食物の持ち込みは遠慮するよう案内されています。

大覚寺 公式サイト

📌 御朱印について
上記三つの行事について、二〇二六年の限定御朱印の授与は、現時点で公式に発表されていません。 大覚寺では例年、観月の夕べにあわせた切絵御朱印が頒布された年もありますが、今年の内容は未発表です。授与の有無は各寺社の公式サイトでご確認ください。 情報が出しだい、このページに追記します。

■ 夏詣は八月三十一日で終わります

九月に入る前に、ひとつだけ。

夏詣の限定御朱印は、その多くが八月三十一日で頒布終了となります。 九月になってから「まだあると思っていた」ということが起きやすい時期です。

京急夏詣キャンペーン2026も、七月一日から八月三十一日までの開催です。二十社達成賞のオリジナル絵馬は先着八百体、エリア達成賞のアクリルキーホルダーは各先着千個と、数量限定のものもあります。

気になっているものがあれば、八月のうちに。

8月の限定御朱印はこちら


■ 都道府県別に探す

お住まいの地域、旅先の地域で、いま授与されている限定御朱印を探せます。

御朱印カレンダー【地域から探す】

こちらは毎月更新しています。九月に入りましたら、九月の授与情報も反映されます。


■ 詠子からのアドバイス

「その日だけ」の御朱印にご注意ください
九月は、当日限りや数日間だけ授与される御朱印が集中する月です。九月九日の重陽、九月二十三日の秋分、そして九月二十五日の十五夜。月をまたいで待っていると、気づいたときには終わっている、ということが起きやすい月でもあります。気になるものは、日付を書き留めておかれることをおすすめします。

残暑と、秋の長雨に備えて
九月の上旬は、まだ暑さが残ります。白露のころから大気が不安定になり、「秋の長雨」と呼ばれる雨の季節にも入ります。台風の多い時期でもありますので、遠方へ足を運ばれるときは、直前の天候と、各寺社の公式発表をお確かめください。

雨の日の境内は、人が少なくて静かです。濡れた石畳や、雨に洗われた木々の色は、晴れた日には見られないものでした。雨だからと諦めずに出かけてみるのも、九月らしい参拝かもしれません。

夜の参拝は、足元にお気をつけて
観月の行事は夜に行われます。境内は思ったよりも暗く、石畳や玉砂利は昼間とは違う顔をしています。歩きやすい靴で、明かりを持って。月を見上げるときこそ、足元を。

このページは随時更新します
九月分の授与情報は、これから各寺社で発表されていきます。新しい情報が入りしだい、このページに追記していきます。ときどき覗いていただけたら嬉しいです。


名月の まだ満ちきらぬ 夜を待つ ―詠子―